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週刊 結局やらない

初めてのカレー作りなのにスパイスから調合する愚かしさ

今時、文章を書くといえばキーボードで入力する場合がほとんどである。
ペン(筆)を持って書かれる文章というのは貴重になってしまった。
かくゆう私も、今まさにキーボードで文章を書いているのだが、たまに思うことがある。

さもそれを生業にしているかのように文章を書くなら、ペンを握って書く方が雰囲気が出るというものだ、と。

私のような意思の弱い人間に限って、形から入りたがるものである。

文章を書くなら高い筆を買い、ゴルフを始めるならウェアを揃え、カレーを作るならスパイスを揃える。

人によってはこういった行動は阿呆らしいと思うかもしれないが、私は悪くないと思う。
だって、意識的に自分のモチベーションを上げられるなら素晴らしいことだ。
高い筆を買って、それでやる気が出ていっぱい文章が書けるなら大成功と言えるだろう。

しかし、筆を買って終わりということがある。
これはダメだ。

せっかく整えた部屋や道具たちが埃を被っていく様は見ていられない。
その様を見れば、高めようとしたはずのモチベーションがどこかへ逃げていく。
形から入るという行為はこういう怖さも兼ね備えているのだ。

じゃあやっすい筆でもいいからまず書き始めるのがいいのか?
というと、そうとも言えない。

書くのを描く、に置き換えるとわかりやすいだろう。
絵でも描いてみようとして安い筆から始めてしまうと、
本来の実力以上にひどいクオリティに仕上がってしまい、自分の才能を疑う原因になるかもしれない。

「これはダメだ、向いてない」と諦めたその原因が、筆の値段にあったなんて誰が考えられよう。

形から入ることが作品のクオリティを高めてくれる可能性があるなら、
まずはそこに「頼る」という気持ちで書いてみるのもいいかもしれない。

だから私はコーヒーを傍に置いて文章を書いたりする。
ひどいときは部屋をわざと少し薄暗くして書いたりする。

ナルシストではない。私は私の作品に失望しないように努力しているのである。