初めてこう思ったのは私がたしか中学生くらいの頃であったと思うが、
君なら大丈夫、きっとやれるさ
と言うような歌詞のフレーズを聴くと、
「おれに会ったこともないのに、どうしてそんなことが分かるんだ?」と思っていた。
賢くはないくせに、理屈くさい中学生であった。
しかし、今でも同じように思う時がある。
中学生の頃のマインドから成長していないと思うとやや複雑である。
ただ、ひとつだけ追加で気づいたことといえば、
もちろんその歌は私に向けて作られた曲ではないが、
そう思い込むことはできる
ということである。
つまり、「今からインターハイ出場を賭けた試合に挑もうとする自分に向けられた曲だ」
と思い込んでしまえばいいのである。
そして、こう思える人間は心のコントロールが上手いと言えるだろう。
心、というより自らのモチベーションを上げるのが上手い。
耳に入った応援やポジティブな言葉というのは、
自分へのものだと思い込むのが吉なのかもしれない。
CHOUJI – 奮闘中 beat by mosaic404
今回紹介するのは、
Awichや唾奇、CHICO CARLITOなど有数のラッパー排出地である沖縄を間違いなく代表するラッパー、CHOUJIの代表曲である。
何も心配ないよ 俺がなんとかする
何も心配ないよ 俺がなんとかする
たまにおかしくなってもすぐ戻るから
ただいま奮闘中、きっと大丈夫 (CHOUJI – 奮闘中 beat by mosaic404)より
やっぱり、自分に向けられた言葉にはいまいち思い込めない私には、
こういったフレーズの方がありがたかった。
というのも、
このフレーズを吐く人間からは、良い意味で計画性というものを感じない。
「今は苦しい状況だけど、
そこから立て直す為にこんな考えがあって、
その為に今これだけ動いている最中で、
それが形になるのがいつ頃のはずだから、
きっと大丈夫」
なんて細々とした計画性は感じない。
とりあえず、「大丈夫」と口に出してみるのである。
やめられないタバコに火 てか税金上がりすぎ
またライターがつかない ガス切れでも願えば一回ぐらい
今日の金を数える 電卓叩いてホッとする -(CHOUJI – 奮闘中 beat by mosaic404)より
馬鹿な男とは俺のことさ
女と遊んでても頭に音が
浮気って言うな作詞作曲だ
もうすぐ売れる予定の音楽家 (CHOUJI – 奮闘中 beat by mosaic404)より
ネガティブを込めて言っていると誤解されたら不本意なのだが、
私が人生で関わりそうにない人の書いた歌詞、という感じである。
私はあまり好きではないが、学生がよく使う言葉で「陽キャ、陰キャ」という言葉がある。それに当てはめるなら、いわゆる前者の歌詞である。
だから、私はこんな風にはなれないし、もし思っても言葉や歌にすることはない。
しかし、である。
考える前に「大丈夫」と繰り返せるタフさのようなものは私にはないから、
どこか憧れる節もあるのだろう。だから、なんとなく安心する。
冒頭に書いた「君なら大丈夫、きっとやれるさ」の歌詞は、私個人を想定して書かれてなどいないが、誰かにとっての応援ソングとなる想定はしているだろう。
だから、なるべく多くの人にとって「自分の歌だ」と思えるように、個人的で具体的なワードは抜き、抽象的な歌詞になる。
これを「打算的」と感じるのはやはり性格が良くないかもしれない。
でも私は「奮闘中」のように極めて個人的な、誰かのドキュメンタリーを見る方が発奮させられる。
そもそもドキュメンタリーは誰かを応援するものではない。
時に、それに触れた人にとって非常に思い当たる節のある内容だったりするから、その温度感やリアルさに心揺さぶられるのである。(⇦他記事リンクあり)
最後になるが、本曲のリラックス感あるサウンドに油断していると、こういったフレーズで不意に泣きを誘われたりする。
上に引用したフレーズたちも好きだが、私が一番好きなフレーズは以下である。
誰にも見せない涙が歌に
この瞬間、心が踊る (CHOUJI – 奮闘中 beat by mosaic404)より