サビは曲中に3回演奏される。
それこそが誰が決めたでもない常識となってしまった。
よくある曲の展開からそれを説明すると、
イントロ→
(一番)Aメロ→Bメロ→サビ
(二番)Aメロ→Bメロ→サビ
間奏→Cメロ→(小サビ)→大サビ
→アウトロ
このように三回。
大サビ前の小サビ(盛り上がる前のしずか〜なサビ)を入れると四回繰り返される。
と、いうのもやはりサビは曲の「顔」であり、
そのサビに作曲者は一番美味しいところを詰める。
せっかく旨味が詰まっているところであるなら、
そりゃあ何回か噛んだ方が美味しく頂けるだろう。
しかし、中には最初の一口、
口に広がる初手の味わいだけで勝負を決めにくる曲たちがある。
そんな、サビが一回しかない曲、
3曲を紹介していく。
1.THE BLUE HEARTS/情熱の薔薇
情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう
花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方
曲の知名度は高いが、サビが一度のみと知らなかった人も多いはず。
「永遠なのか 本当か」から始まる歌い出しのメロディも、サビに劣らず印象的である。
これをAメロというならば、次にBメロ、
そしてまたAメロ、Bメロときてやっとサビ、で曲は締め括られる。
この一撃必殺感、そして潔さ、たまらない。
展開を意識して聴くと、サビまでで焦らされながらも、
同時にAメロBメロの美しさを再認識させられる。
※(貼れる動画が見当たらなかったので気になる方は↓で検索)
https://www.youtube.com/results?search_query=情熱の薔薇
2.SUNNY CAR WASH/ティーンエイジブルース
世界を変えられない僕を
世界も変えられはしないだろう
ギターを売ってしまったなら
もうお前は友達じゃないのさ
2016年宇都宮発、
今年1月から活動再開したロックバンド、
SUNNY CAR WASHである。
彼らの曲は3分前後の短尺な曲が多い中、本曲は4分で一度のみのサビ。
そしてそのサビが曲のちょうど真ん中くらいにくるという、
J-rockにおいてはトリッキーな構成である。
サビが一度のみにするというのは、
「その一発で心を掴める」という作り手の自信とも伺えて好きなのだが、
それもあくまで私の妄想である。
しかし、そのサビにこんなキラーフレーズを置かれるとついそんな風に思ってしまうのだ。
3.Saucy dog/いつか
本曲で一躍ブレイクを果たしたバンド、Saucy dogであるが、
私はこれほど、展開に唸った曲はなかった。
君の見る景色を全部
僕のものにしてみたかったんだ
あぁ 君を忘れられんなぁ
一度のみ訪れるサビの歌詞であるが、
最後の「君を忘れられんなぁ」のメロディに全ての旨味が凝縮されている。
一曲通しての盛り上がりをグラフのようなもので可視化したとして、
おそらく満場一致で、この部分が山のてっぺんに位置する。
ここが含まれたサビが、順当に一番のサビで訪れ、
その旨味にぼんやりしているうちに曲は間奏へと流れる。
「ああ、二番がないタイプの曲か」と思っているうちに、
小サビ´(しょうサビだっしゅ)が来る。
「おいおい焦らすやんけ…」と思うのち訪れる大サビ…
ではなくCメロである。そしてそのまま曲は終わる。
なんというSっぷり。
最後のCメロも、最初の一小説だけサビとほぼ同じメロディなので一瞬騙される。
「君を忘れられんなぁ」のメロを待っていた身としてはとんでもないスカされ方である。
しかし、この確信犯的構成には惚れ込むしかない。
一番の旨味を一度だけ与える。
もう一度欲しかったらもう一度最初から聞かんかい、
という姿勢に服従する他ないのである。
「サビが一度だけ」の展開を最もうまく活用した曲であると私は思う。
以上、三曲を紹介した。
この「サビが一度だけしかこない」という手法。
最初は「一発で勝負」という潔さから侍のような佇まいを感じていたが、
焦らす(腹を減らす)ことによってサビの旨味を高めたり、
もしくはサビの旨味を与えておいてあとはおあずけ、
というあたり女王様の間違いであった。
他にも、このタイプの曲を知っている方いれば、ぜひ教えてください。