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音楽コラム

広く浅くで知り得る専門用語、すべてボカロ曲のタイトルに使われている説

曲名を決めるというのはなかなか難しい作業である。
せっかくならかっこいい曲名をつけたいと思ってしまうのだが、

かっこいいといえば横文字だ、とそれらしい単語を探していく。
そんなときに役立つ基準として、

一般的には使わないが、なんとなくカッコよさげなカタカナ

である。

実に馬鹿そうな説明だが、例を出せば理解いただけると思う。

 

「デカダンス」

という単語を私が初めて聞いたとき、その魅力的なオーラに震えた。

デカダンス(decadence)、と検索すると

虚無的・退廃的な傾向や生活態度。

と出る。

虚無だの退廃だの、私の中の内なる中学二年生が大好物だと叫んでいる。

しかも、ダンスという単語が入ってるのだ。
これは曲名に使ってくださいといっているようなものである。

もちろん私は使わせてもらおうと思ったが、
誰かの二番煎じになっていたらなんだか冷める。

私はたまたまこのワードを知ったが、
どうかこれが実にマイナーな専門用語であり、
世間の皆様が知らないであってほしいと願うばかり。

どうか同じタイトルの曲がまだ世間に存在しないでくれ。

私だけこっそり知っていたというのが一番気持ちいい。
もはや私だけのデカダンスなのである。

合格発表でも見るかのような気持ちの中、

youtubeで検索をかけてみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ダンスダンスデカダンス【カラスヤサボウfeat.鏡音リン】

 

クソが!!

 

と私は地団駄を踏んだ。

しかも曲を聴いて見ると明らかに「デカダンス」に対して大した知識がない。
私だってないが、いざ曲名として使うことになれば、
もともと知っていたかのように深く勉強しようと思っていたのである。

もうデカダンスへの熱はさめた。

しかし私の被害は続く。
だんだんとどういう単語がどうせ使われているかもわかってくる。

たとえば、創作に使いたいわけではなかったが、
厨二病のいかにも大好物らしい
「シュレーディンガーの猫」で検索して見ると

ほらあった。

横文字じゃなければ大丈夫だと思いながら、念のため検索した「酔生夢死」まで

あった。私はもうだめだ。

あと、「精神病」や、「なんたら『シンドローム』」というワードも厨二病の餌食なので、それらを検索欄に叩き入れてみると

いっぱいあった。
ぬかりなさすぎて恐ろしい。

しかしこれら全て、私が専門的な分野に踏み込まずして得た単語たちである。
なんの苦労もしていない私が、何か盗作でもされたように彼らを責める義理は一つもない。
こうして私の憎しみは逆恨みであると判明した。

 

 

このようにして、
私の唱える「広く浅くで知り得る専門用語、すべてボカロ曲のタイトルに使われている説」は私の中で実証されたのである。

要するにこういったものは「使ったもんがち」であり、
なぜそういったタイトルを選んだか、などの考察はあとからついてくるものである。

ただその考察というのはおおよそ視聴者側の深読みであることが大半で、
「これいい曲だけど、デカダンスっていうタイトルはどういう意味なんだろう?」
となり、検索し
「へえ〜よくわからないけどかっこいいっぽいぞ!」
とこれで終わりなのである。

単語そのものの耳馴染みのなさや、「一応」専門用語であるという事実が
曲の深みまであるように錯覚させるのである。

ちなみに私が思いついた単語で、これはまさかだれも思いついていないだろう、と思った

「敏感ペットボトル」

ロックバンドに先を越されていた。

もうだめだ。