深みのある失恋ソングを作る方法を伝授したい。
失恋ソングといえばJ-pop界の主要産業であり、
ここを抑えたならばアーティストとしても一人前である。
しかし、平々凡々な失恋ソングではその産業で生き残れない。
皆、なんらかのギミックを投じて、頭一つ抜け出さんと今日も努力している。
そんな争いから、いとも簡単に抜け出し、勝利を得る方法。
結論から言うと、
死別の可能性を歌詞にチラつかせることである。
つまり、
「この曲でいう『あなた』はもう死んでいて、それが別れの原因だったのでは…?」と
深読みをさせるのである。
わかっている。大変不謹慎である。
しかし、これにはきちんとした理屈があるので説明させてほしい。
まずJ-popの視聴者というのは、「考察」なるものが大好きである。
それを実感するには、youtubeのコメント欄でも見るのが一番早い。
「Bメロで出て来る〇〇っていう歌詞は、実は〇〇のことを表していて、〇〇を思っての曲らしい… ここまで考えるなんて天才!」 (500 いいね!)
「この曲って○分◯秒だけど、これって彼女が亡くなった命日の◯月◯日を思ってのことらしいよ… 泣ける」(800いいね!)
世にも勝手な考察ばかりである。
しかし、皆さんにも見覚えがあったはず。
まあ、わざわざコメント欄に書いて同意を得るまではしなくても、
心のうちで人はそれぞれ考察というものを行なっているのだ。
その考察で辿り着く答えとして、最もポピュラーなのが死別である。
「ポピュラー」と「死別」という二つのワードを並べる日が来るなんて思わなかったが、事実だからしょうがない。
残念ながら、インスタントな感動を得るにあたって、「死別」というのはあまりに都合がよいのだ。
友人とどんなに楽しい話で盛り上がっていても、親しい人が亡くなったと言われれば皆一度その口を閉じ、冷静になるものである。
ここまで書いて、いよいよバチがあたりそうな気がしてハラハラしてきた。
なので早めに、実践的な話に移る。
では、死別である可能性を歌詞にチラつかせるため、
どんなワードを歌詞に入れていけば良いか、難易度別にいくつか紹介していく。
① 「空を見上げる」という歌詞を入れる
難易度:★☆☆☆☆
非常に簡単な手法である。
やはり死者が行く場所といえば天国、たかーい所というイメージであるため、そこを見上げるだけで死別を連想できる。
しかし、確実に死別と断定させるには弱く、ただ青春な行動として空を見上げている場合もあるし、ただのナルシストという可能性もある。
② 「星になった」という歌詞を入れる
難易度:★★☆☆☆
星といえば故人である。
「空を見上げる」に比べると表現が直接的でわかりやすいが、なにせわざとらしい。
こう言ってしまうくらいならAメロで「死んだあいつは」くらい言ってしまった方が個人的には潔くて好きである。
③不自然なほど「会えない」ことを強調する
難易度:★★★★☆
別れてしまった以上、会いたくても会うわけにはいかない。
どんなに会いたくても、絶対にもう会うことはできない。
会いたくて胸が潰れそうな日もあるけれど、会うことはできない。
雨の日も晴れの日も会いたいと思うけれど、会うことはできない。
もう会ったらええがなとここで誰もが一度は思うものだが、
次の瞬間、死別の可能性が頭をよぎりはじめる。
ただの恋愛中毒者のように思われたらそこまでであるが、
そこは考察者の感受性次第である。
難易度に比例して、死別の匂わせ方がおしゃれになってきた。
④アルバムの最終曲に収録する
難易度:★★★★★★★★
アルバムの最終曲というのはそれだけでなにか意味を持っていそうな雰囲気を孕んでいる。
だからと言ってそれだけで死別の曲だと判断してしまうのは暴挙であるが、
その可能性を数ミリでも感じさせるだけで、舌の肥えた考察者たちには満足なのである。
深読みというのは「自分だけが気づいている」と思い込むほど甘美な味わいを含むものなのだ。
以上、具体的な方法を4つ紹介した。
深みのある失恋ソングを書いて見たい方は是非試して見てほしい。
大前提として、考察(深読み)をしてもらうためには、一回二回聴いてもらうだけでは足りないので、他の部分で高水準を保つ必要がある。
歌唱が素晴らしいとか、メロディがとても美しいとか。
それができないなら、ただの不謹慎なだけの低レベルな曲になってしまうが、
本記事のせいで、もしそんな曲が生まれたとしても断固として私の責任ではない。
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