そういやさ そういやさ
昨日の私もこうだった
(【102】[feat. 和ぬか, asmi] ヨワネハキ / MAISONdes より)
tiktokで一躍知名度を上げた本曲。
【102】[feat. 和ぬか, asmi] ヨワネハキ / MAISONdes
どこがアーティスト名で曲名なのかさっぱりである。
気になる答えは、
曲名:「ヨワネハキ」
歌:asmi
作詞作曲:和ぬか である。
動画の概要欄を見ると一応説明があった。
“MAISONdes”は、どこかにあるアパート。六畳半の部屋が沢山。 それぞれの部屋の窓を覗き見ると、それぞれ違う景色が見える様に、 それぞれの住人にはそれぞれの物語と歌があります。 102号室の住人の歌を紡ぐのは、和ぬかとasmi。 是非、覗き聴いていってください。
冒頭の102というのはつまり「MAISONdes-メゾン・デ-」というアパートの102号室。
これが102号室の曲であるように、308号室とか107号室なんかの曲もある。
説明はこれくらいにして、
本曲が多くの人にどういったイメージで認識されているかというと、
「ソイヤッサソイヤッサの曲」であると思う。
なんのことかというと、Bメロの歌詞の「そういやさ、そういやさ」が、
和風の音作りも相まって「ソイヤッサ、ソイヤッサ」に聞こえるというものである。
これは99%意識的なギミックであるが、ユーザーの心を掴む点においてあまりにも大成功である。
tiktokで流行る曲の条件として、
「フレーズから振り付けが連想しやすい」が挙げられる。
@naenano みんな両親のことなんて呼んでる?
「ソイヤッサ、ソイヤッサ」は言わずもがな、
このへんの踊りを連想するので振り付けもきっとそのような…
と思ったらそうでもなかった。
tiktokでは皆、両手を「いただきます」の状態にして、
右上、左上にスイスイと泳がせている。
なぜこの動きに統一されたかは知らないが、
もしかしてこれは、
サラリーマンがエレベーターを降りるときの「すみません、すみません」の手をイメージしているのだろうか。であれば日本的な精神を忠実に表した見事な振り付けである。
まあなんにせよ、動きをつけたくなるようなフレーズというのは間違い無いだろう。
本曲がバズったのは他でもなくこの「ダンスに適した」フレーズのおかげである。
では、本曲の歌詞全体が踊りに適した内容であるかというと、実は真逆である。
弱い音を吐いてる
薄っぺらい人間です
一歩前に出るのはやめときます
絡まれたくはないからさ
描いた理想像に現実味がないから
近づけないよう生きときます
明日も同じよう過ごしときます (【102】[feat. 和ぬか, asmi] ヨワネハキ / MAISONdes より)
一番のサビの歌詞である。
内容は意外にも内省的で、「ダンスのBGM」らしくはない。
ここが、本曲がtiktok人気だけに留まらなかった理由かと思われる。
ずばり説明すると、
この内省的でシリアス、大変乱暴に言うなら「暗い」歌詞は、
本曲が「踊るためのBGM」に終わるのを留めているのである。
先述のようにtiktokに相応しいのは、踊りやすい曲である。
そこに詩的なリリックや高度な演奏技術などは求められていない。
tiktokのBGMとしてはそれでいいのだが、
youtube(原曲)を聴いてもらうにはそれではいけない。
tiktokの動画は再生した途端、すさまじい情報量がなだれこんでくる。
ドンキホーテに入店した瞬間に近い。心がチカチカする。
その中でも「この曲はBGMに留まらない」とどこか感じさせる要素が必要である。
この曲の場合「なんか意外と暗いこと歌ってんな」とそんな具合である。
このyoutubeへの誘導が叶わなかった曲もあるなか、
「ヨワネハキ」はそれが大変うまく行ったと思う。
好きすぎて会いたい / エイトMAN
この「好きすぎて会いたい」、youtubeで聞くと失礼ながら大変ペラペラである。
が、tiktokのBGMとしてはとてもいい。
ゴチャゴチャ余計な要素がなく、スッと入ってくる。
この曲は「そいやっさ」ギミックだけによってブレイクしたわけではない。
ただこのギミックが大変強力な「入口」となりファンをドンハマりへと誘導したのである。
最近ではFIRST TAKEにも登場し、「音楽好き」までファン層を広げることに成功した。
tiktokのBGM → youtube原曲 → FIRST TAKE
という誘導の流れはあまりにも王道的で綺麗である。
ワンフレーズからブレイクを掴んだ楽曲は、
「どーるちぇあーんどがっばーなー↑」でお馴染みの 瑛人「香水」や、
「ドラゲナイ」「ダーゴナイ」でお馴染みのSEKAI NO OWARI「Dragon Night」
などが思いつくが、
いずれも現在の国内人気アーティストに堂々と名を連ねている。
今後の和ぬか氏やasmi氏の活動に注目である。
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