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音楽コラム

2022年、早くも傑作と出会う。 (リーガルリリー/たたかわないらいおん)

 

君が猫背なのは、耳をそば立てるから。
僕は背伸びやめて、君のそばにいたい。-(リーガルリリー/たたかわないらいおん)より

 

始まったばかりの2022年、もうこんな傑作に出会えるなんて幸せである。

今回紹介する楽曲「たたかわないらいおん」は、リーガルリリーが2022年1月19日リリースする2nd Full Album「Cとし生けるもの」のリードトラックである。

 

リーガルリリー/たたかわないらいおん

リーガルリリーについては以前「トランジスタラジオ」という楽曲について前半後半分けて記事を書いたが、本曲も変わらぬインパクトがあった。

イントロから聴こえるギターのメロは伸びやかで、これからのサウンドの広がりを予感させる。期待通りに音が鳴ったかと思えばすぐに歌へ入り、voのたかはしほのかの声が響く。

こんなにいい声だっけ、と思った。少年とも少女とも感じられるような声は、歌詞の一人称に性別の先入観を与えず、そこも武器になっている。

そんなことを楽しんでいるうちにBメロ。

君が猫背なのは、耳をそば立てるから。
僕は背伸びやめて、君のそばにいたい。-(リーガルリリー/たたかわないらいおん)より

こんなに良いフレーズある? いや、ない。
ただ優しさと愛おしさに溢れている。

そしてサビ、駆け上がるような入りのメロから一気に世界観が広がる。

(再生でサビ部分から視聴可)

たたかわない君は銃口を塞いだ。
迷わない。迷わない。
唇ひとつのメッセージ信じて、 空に願いました。-(リーガルリリー/たたかわないらいおん)より

そしてこの詩世界。
「銃を下ろした」でもなく「塞いだ」ということは、銃を撃とうとしているのは「僕」だろうか。
歌詞の全てを引用することはしないが、本曲の歌詞において「銃弾」は「言ってはならない言葉」に置き換えられていると思える。

 

以下が二番Aメロの歌詞。

言葉の銃弾。 落ちてきた頃に泣いた。
目の前の暗がりは1人で守るんだ。-(リーガルリリー/たたかわないらいおん)より

そして二番サビ。

たたかわない君が飲み込んだ話の。
戻らない。戻らない。
後悔ひとつのメッセージ信じて、涙落としました。

-(リーガルリリー/たたかわないらいおん)より

少しだけ考察。

撃った弾はやがて雨のように降り注ぐものだとするならば。(一番Aメロの歌詞より)
つまり弾は「よーいドン」のときのように空を向けて撃たれるものだとしたら。

らいおんのように強くありながら「たたかわない」君を、僕はついに銃で傷つけてしまった。その弾がやっと落ちてきた頃に、後悔の念で涙する。君のいない世界は暗がりになった。それでも、「銃口を塞ごうとした」君のことを思い出しながら、迷わないよう生きていく。

というのが私の考察、というか妄想である。
トランジスタラジオのときもそうだった。もうほとんど私の妄想した物語のようになっている。「考察」などと言っておいて二次創作のようになってしまうのは私自身嫌いなのだが、曲の魅力がそうさせてしまう。

他のバンドではこんなことはないから、それだけでリーガルリリーの詩世界は特別なのだ。

 

曲全体の話に戻るが、歌詞の深読みなどに走らなければ、実に晴れやかで伸びやか、美しい曲である。特にサビではメロディと言葉の乗りが良く、映像もあいまってどこか「上昇」というワードをイメージさせられる。

そう、こんな風にシンプルに楽しめばよいのに、いつも野暮な考察をしてしまう。
罪なバンドである。

もしここまで読んでくださった方が曲をまだ再生していないのなら、私の所為で余計な先入観など与えていないことを祈る。
わかってほしい。本当に良い曲なんです。

リーガルリリーCとし生けるもの』Official Trailer