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音楽コラム

「親不孝エピソード」が出てこない感謝の歌 (ウルフルズ/かわいいひと)

 

「親への感謝」を歌った曲というのはこの世に溢れている。
それもただの感謝ではなく「親不孝を経ての感謝」が多い。

かりゆし58「アンマー」

アンマーよ
私はアナタに言ってはいけない決して口にしてはいけない言葉を

加減もせずに投げつけては
アナタの心を踏みにじったのに
アンマーよ アナタはそれでも変わることなく
私を愛してくれました     (アンマー:「お母さん」を意味する沖縄弁)

 

大橋卓弥「ありがとう」 

出来が悪くていつも困らせた あなたの涙何度も見た
素直になれずに罵声を浴びせた そんな僕でも愛してくれた

 

とまあ、大体同じような内容である。

怒鳴ったり汚い言葉を使ってしまうのは思春期であれば誰でも一度はありそうな失敗なので、これだけで「親不孝」まで言えるかは微妙なところ。
まあ本当は歌にも入れられないような「親不孝」エピソードがあったかもしれない。

親不孝の度合いは人それぞれだが、
誰しも後悔とともに感謝を感じている、ということだ。

しかし、「感謝」と共に「後悔」まで歌のテーマに加わると、
どうしても曲がバラード調に寄っていく。
良くも悪くも「じっくり聴かせる感動タイプ」の曲になり、
BGMにしたりヘビロテしたりということには向いていない。

そこで、親への感謝の歌ではとってもリラックスして聴ける曲を紹介したい。

 

ウルフルズ「かわいいひと」

ごきげんさーん
もしもしそちら調子はいかがですか
ぼくはグー、はたまたパー いやチョキかも
なんちゃってねー

軽快も軽快な歌い出し。
この脱力感を持って歌詞をかけるのはトータス松本の他さくらももこ氏くらいである。

かわいいひと、というタイトルのおかげで母親への歌というニュアンスは良い塩梅に隠されている。さも恋人へのラブソングのようにように見せかけるユーモアこそ、照れ隠しが伺えて可愛らしい。

親への感謝ソングなど一人のアーティストが何曲も書くことはないが、
この一曲だけでも十分に「ウルフルズ節」が感じられる。

 

先に紹介した2曲が、目の前で正座して思いを伝えるようなイメージだとするなら、
「かわいいひと」はLINEスタンプで「ありがとう」と送るようなものである。

どちらも同じ感謝。
照れずにきちんと想いを伝える日を設けるのも素晴らしいが、
日々忘れずに過ごすのも素晴らしい。