私が小学2.3年生の頃の思い出の話。
当時の私はPS1(プレーステーション1)のソフトとしてリリースされた「サルゲッチュ」なるRPGゲームをプレイしていた。
ざっくりいうと「逃げ出したサルを捕まえて回る」ゲームなのだが、「かしこくなるヘルメット」的なものを手に入れてしまったサルたちなので簡単には捕まらない。
また、曖昧な記憶だが、なにやら様々な時代へタイムスリップしながらサルを捕まえていたような気がする。
当時の私はこのゲームに夢中であった。
7.8歳の小さな脳を振り絞りながら、夢中になってサルを追いかけ回していたのである。
いろんな時代に逃げたサルを追いかけ、ジュラ紀や氷河期などを旅していく。
ジュラ紀では、恐竜から逃げ回りながら同時にサルを追いかける。
時にはサルが恐竜の上に乗っていたりして「どないしたらええねん」となったりもする。
氷河期ではマンモスの上に乗るサルを打ち落としたり、時にはシロクマと対峙したりといろんな展開が待ち受けていた。
そして最終ステージは「現代」である。
これまでのようなとんでもない獣たちこそいないものの、
ボスザルが用意した様々なギミックが主人公に襲いかかる。
今、振り返ればこのゲームはそこそこ難易度が高く、7.8歳がすらすらとクリアできるようなレベルではなかったように思う。当時、攻略サイトなんてものが既にあったかは知らないが、パソコン自体を年齢的に触ることがなかったため、完全に自力で挑んでいた。
そして最終ステージ、捕まえるサルは残り1匹、というところまできた。
こいつを捕獲すればいよいよボスザルとの最終決戦!という状況だが、
結果、私は永久にこのサルを捕まえることができなかったのである。
サルが見つからなかったわけではない。
むしろその姿は容易に確認できた。
サルはステージの中盤で通りがかる小部屋ような空間の中にいた。
その部屋の一面のみ鉄格子で作られており、さながらそれは牢屋であった。
姿は見えているが、どうやってそちら側に入れるのかがわからない。
サルは別に囚われているような様子でもなく、ボケーとした顔でまわりを見つめていた。
大抵、ゲームにおいてこういうパターンのときは、
先に進めばどこかの道からその牢屋につながるようになっているものだ。
しかし、どんな手を尽くしてもその牢屋内につながるルートを見つけられなかった。
隠し扉のようなものがあるのかとそこらの壁を叩いたり、
もしかするとと思い暗闇の谷底へ飛び込みゲームオーバーになったりもした。
また、「鉄格子=中には入れない」という考えが過ちなのではと疑い、それを破壊しようと試みたり、
鉄格子の隙間からサルをパチンコで攻撃し、めぐりめぐって内側から鍵を開けてくれないかと祈ったりもした。
しかし、どれも正解ではなかった。
小学生であった私はとうとう嫌になり、ここでプレイを諦めてしまった。
今ならば正解に自力でたどり着けただろうし、最悪攻略サイトでもみて答えを知ってしまえた。
しかしその選択肢がなかった当時の私は、そこでコントローラーを置いてしまったのだ。
そしてしばらくすると「サルゲッチュ2」が発売され、そちらをプレイするようになった。
ゲームというのは、時代が進むごとにいわゆる「ゆとり仕様」になっていくと言われているが、
例に漏れず「2」のほうは簡単にクリアでき、なんの苦労もなかった。
あれから十数年経った今でも、ときどきあのサルのことを思い出す。
どうやったらあそこまでたどり着けたのだろうか? 檻の中で奴は何をしていたのか?
たどり着けたならその理由もわかったのだろうか?
攻略サイトなんて一瞬で調べられるようになった今だが、その答えについてだけは調べていない。
その1匹のサルだけは「現代」ステージの牢屋の中に今でも置き去りである。