ロックバンドがサビの歌詞に使うワードで、
一番多いものは何か。
サビというと、大抵AメロBメロよりキーが高くなり、
歌っていても聞いていても、最も気持ちの高まる部分。
そこに持ってくるワードで一番ベタなものは何か。
結論から申し上げると、「願い」と「命令」に属するワードである。
代表例が以下。
「届け」「走れ」「飛べ」「歌え」「踊れ」「行け」「立ち上がれ」
なんとなく私の言いたいことがわかって頂けたのではないか。
そしてこれらの言葉が叫ばれる曲、一曲くらいはすぐにでも思いつくはずである。
「願い」は歌い手から神様か何かへ向けて。「祈り」とも置き換えられる。
「命令」は歌い手から聞き手へのメッセージとして、奮い立たせるようなニュアンスで叫んでくる。えらそうに。
あと、ロックバンドと自分で書いておきながら、
これらのワードから私が最初に思い浮かべたのはFUNKY MONKEY BABYSであったが、まあいい。
さて、ここからが本題である。
先に羅列したような「願い」や「命令」のワードから分析できるように、
サビで叫ぶ言葉というのは抽象的でスケールが大きく、ストレートなものが向いている。
実際日本で歌われる曲にはそういったものが多く、我々はその曲たちに耳を慣らしてしまっている。
そうすると、以下のような曲に違和感を覚えることがあるのだ。
ASIAN KUNG-FU GENERATION、通称アジカンの「ソラニン」。
2010年公開の映画「ソラニン」の書き下ろし主題歌としてリリースされ、
作曲はゴッチこと後藤 正文、
作詞は映画の原作となった同名作の原作者、浅尾いにおが行なっている。
さて、この曲のサビにどんな違和感があるのか、説明のためにまず歌詞を見て欲しい。
たとえばゆるい幸せが
だらっと続いたとする
きっと悪い種が芽を出して
もう さよならなんだ
だらっと続くゆるい幸せが、終わりを報せる。
そう言われると身に覚えがあるような、なかなか鋭利なフレーズである。
そんな歌詞の中、私が最も違和感を覚える部分。
それは「だらっと」である。
サビの中では最もキーの高くなる部分で「だらっと」と叫ぶ。
サビには抽象的でスケールが大きく、力強い言葉が似合うとするなら、これでは真逆である。
言葉と歌唱のテンションが合わない。ここに私は妙な違和感を覚えていた。
しかし。
ここでこのワードを選んだ理由を深読みしてみると、
曲の味わいを何倍も深くするギミックが隠されていた。
後半((後編)だらっっとーーーー!!とだらっとじゃなく叫ぶ理由(ASIAN KUNG-FU GENERATION/「ソラニン」)に続く。