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音楽コラム

謎多きクリエイター「葛飾出身」氏とは。 &「凍える」レビュー

 

2021年4月4日、twitterで以下の動画が流れてきた。

 

その珍妙なサムネイルに惹かれて再生。

いいね!みたいな頭の形をしたスーツの男達。
ロックでブルースな演奏に合わせ、「ピ」だか「ポ」だかわからん発音でメロディを歌う。
そしてアーティスト名が「葛飾出身」で曲名が「凍える」。

 

謎が多すぎる。
多すぎるがしかし、曲から受ける第一印象は最高である。

この「葛飾出身」氏について記事を書く以上、謎が謎のままではダメなので調べてみたところ、

香川出身。2018年頃より、Twitter上で自作のレタリングをフィーチャーした短編ビデオ日記「今日の日記」の投稿のほか、MVを中心に映像作品を制作。ビザールギターを見るのが好き。

(所属プロダクション「VIXI」のHPより引用。)

初めの一文のせいで余計にわからなくなった節があるが、
他のインタビュー動画などの情報を含め、主に映像作品の制作を行う22(or23)歳の男性らしい。(※追記:この10月で23歳になられたもよう。おめでとうございます。)

MV監督を務めた作品に
酸欠少女さユり『かみさま』があった。

 

また、その活動の場としてメインに置いてるのがtwitterらしく、そこでは「今日の日記」と題して以下のような動画を挙げている。

 

この質感や雰囲気、なんらかのゲームで見た気がするが、
もし、今改めてプレイさせてもらえるなら是非したい。

そんな懐かしさから派生するワクワクを感じさせてくれる。

 

 

 

そもそも人は「懐かしい」と言いながら、
「では、これが過去に見た何に重なるから『懐かしい』」かは不明なことが多い。

ただ、私は「懐かしい」とか「切ない」という感情の原因は解明しない方が良い、と個人的に思っていて、過去記事にもそれを書いた。

同時に、そう思えることが本曲に魅力を感じた一つの理由では、と思っている。

 

葛飾氏が得意として手がけるフィルム調の映像やレトロゲームの雰囲気。
その不完全さ、荒さに触れることで、
その不十分な箇所に自分の想像を保管して鑑賞を人は行う。無意識に、である。

別の例えで言い換えるなら、

視力が2.0の人は「目を凝らす」ということをしない。
が、0.1の人は、よく見えない分、目を凝らしてそれが何か捉えようとする。
だからこそ、道端で目の前を横切った白いものが、
「風で飛ぶコンビニ袋」か「走り抜けた白いノラ猫」か、などど見解が分かれるのである。

その正解は明かすことなく、ここの判断や受けた印象に委ねることで面白みが生まれる。

「凍える」はまさにそういった作品で、
まず歌詞というものがない。
インスト曲とは違い、そのピポパポで歌う主旋律は明らかに「歌メロ」である。

ピアノやギターでの演奏を想定したメロではなく、
歌う為に作られ、歌詞だってちゃんと存在するかのようなメロをあえてピポパポで歌うのだ

また、MVで歌う彼らの姿ははどうしてもビートルズを想像させられるが、
必ずそこには昭和歌謡の香りも確かに入っており、その実態は掴めない。

「あの映画のパロディを痛快にやってのける」とか「あのレトロゲームの質感を完全再現」などが魅力の作品とあえて比べるなら、完成するまでの数手を残して、触れる側にそれを委ねた作品。

未完成の「完成品」である。

 

そして、私が以上のように捉えるのも、当然私の勝手な補完によるものだ。
なのでこれが愚かな深読みである可能性も十分にあるが、許してほしい。

だってこんな才能を目の当たりにしたらついつい色々書きたくなる。
先にも書いたが、葛飾氏は現在23歳でおられるようで、
その若き才能に震える、いや、凍えるばかりである。


(「凍える」は14:05~)